春、それは暖かくなる季節。3月になると地域にもよりますが徐々に気温が上がって雪の心配も減り、バイク乗りがソワソワし出すタイミング。
『バイク乗りてぇ!ツーリング行きたい!』そう思うライダーも多いと思います。冬の間乗っていなかったバイク、『エンジンかかるかな?よしっ!かかった!ちょっとひとっ走りいっちゃお!』とはやる気持ちはわかりますが、『ちょっと待った!!』
数ヶ月動かさなかったバイクは【危険】なので最低限のメンテナンスをしましょう!整備不良により出先で始動不良、転倒や事故をしてしまっては目も当てられません・・・
最低限チェックしておきたいポイントは8点。
- バッテリー
- エンジンオイル
- 冷却水(水冷エンジン)
- ブレーキフルード
- レバーなどの稼働部
- チェーン
- タイヤの空気圧
- ライト類
となっています。それぞれ深掘りしてなぜ点検整備が必要なのかをお伝えしたいと思います!

この記事は自動車整備士歴15年以上の経験と見解でお送りいたします。(バイク整備は趣味)
結論:バイクも寝起き、いきなりダッシュはきついし危険。
人も起きていきなり100mダッシュはしませんよね?バイクもそうです。何せ1日ではなく数ヶ月寝かせていた人も多いはずです。寝起きから通勤・通学ダッシュするまでには人でも準備が必要ですよね。
目覚まし:バッテリーは放電していませんか?
食事:燃料タンクにガソリン入ってますか?
血液:エンジンオイルの量、汚れは大丈夫?
靴ひも:タイヤの空気圧は大丈夫ですか?
他にもありますが、人に置き換えるとしたらこんなところでしょうか。私が伝えたいことは走り出す前に点検・整備しましょう!ということです!
そのまま走り出すと、燃料を気にしないことでのうっかりガス欠、バッテリーが放電気味で出先で再始動できない、タイヤの空気圧が低く滑って転倒・・・このようなことになりかねません。困るのはバイクもそうですが本当に困るのは乗るあなたなのです!
寝起きも大事だけど、冬眠前も大事。
寝起きの話をしましたが、寝る前の状態も大事です。
11月、秋も終わりかけ。シーズン最後のツーリング。バイクで一日中走ってきてそのままの状態で春まで放置・・・。
人で言えば仕事で残業続きでへとへと・・・。週末だからと飲みに行って暴飲暴食!なんとか家に帰ってきたけどもう限界。そのまま着替えずにリビングで寝落ち・・・。翌日起きたら・・・もうお分かりですね?
酩酊状態即落ちの寝起きで体調がいいわけがありません。もしろ最悪。二日酔いなら昼過ぎまで何もできないということも経験ある方も多いのでは思います。バイクも一緒です。
寝る前の準備(シーズンオフ)
以前に記事にしていますので詳細はこちらの記事で確認していただければと思います。
- ガソリンタンクは満タンにする
- キャブレター車はフロート室のガソリンを抜く
- バッテリーのマイナス端子を外しておく(バッテリーチャージャーに繋ぐ)
- サビ予防をする
人もバイクも眠る前には準備をしましょう!
走り出す前の準備
本題の走行前準備です。目的は出先で困らないこと、安全に走れること、そして快適であることに重きを置いています。
バッテリー
まずは、始動の要であるバッテリー。インジェクション車はもちろん、キャブ車でもセルスタート方式ではバッテリーが元気でないと始まりません!
バッテリーを普段からバッテリーチャージャーに繋いでいる場合は自動で状態を管理されていたので問題ないと思います。(バッテリーが古くなければ)
バッテリーを何もせずにそのままの状態なら放電しています。バッテリーのマイナス端子を外していた場合でも放置期間にもよりますが少なからず放電しています。なのでバッテリー電圧を点検しましょう!数値は12.5V以上あれば合格!12.2〜12.4Vはやや弱いですが始動できればそのままかけておけば回復するレベルです。これより低い場合は本格的な充電か交換することをおすすめします!


本来ならバッテリー液の比重もチェックしたいところですが、最近はメンテナンスフリーバッテリーが増えているため、比重測定ができない場合が多い。なのでバッテリー電圧で判断するというわけですね。
サーキットテスター(デジタルテスター)を一つ持っていればバッテリー電圧の測定や電装品の取り付けなどで役立つことも多く何かと便利ですよ!
こちらの記事で用途別のおすすめサーキットテスターについて紹介していますので興味のある方は見てみてくださいませ!
バッテリーは使用年数も大事
バッテリー電圧があっても、負荷がかかると電圧がすぐに落ちてしまう場合があります、これはバッテリーが古い場合に起こりやすいです。バッテリーはバッテリー液の化学反応で電気を発生しているので、反応を繰り返すことでいずれ寿命が来ます。バッテリーの寿命は2〜3年と言われますので、出先でも安心して乗りたいのであればこのサイクルの範囲で交換しましょう!(3年以上持つ場合もありますが古くなるとちょっとしたことでバッテリー上がりしますので自己責任で)
エンジンオイル
バイクは車より使用するエンジン回転数が高いのでエンジンオイルの交換サイクルは車より短い『3000kmまたは半年』がおすすめの目安です。
『趣味で乗るから3000kmも乗らないよ〜』という方も多いと思います。それでも年1回エンジンオイル交換することが良い状態を維持する秘訣。なぜならエンジンオイルも酸化しますので乗らなくても劣化してしまうからです。
では、年1回のエンジンオイル交換をいつするか?私が思うベストタイミングは春に乗り始める前。
このタイミングでオイル交換すれば安心してバイクに乗れますし、前回いつ交換したっけ?とならないのでおすすめの交換サイクルとなるわけですね!
距離を走らない方も、毎年春にエンジンオイルを交換しましょう!
冷却水(ロングライフクーラント)
水冷エンジンの場合、エンジンを冷やすために冷却水を使っています。冷却水はエンジンオイルに比べると需要度が低く見られがちですが、実はとても大事。もし水冷エンジンで冷却水が入っていないと数分〜十数分でオーバーヒートし、エンジンが壊れてしまいます。
まずは量を点検しましょう!もちろん、エンジンオイルのように半年とか1年で交換するものではありません。長寿命タイプでない通常の冷却水なら2年ごとの交換、長寿命タイプと言われるものなら初回7年、その後は4年ごと。
通常タイプの冷却水は車検付きのバイクであれば車検ごとに交換すればOK。車検のないバイクは忘れやすいので注意しましょう!
ブレーキフルード
意外と無頓着な人が多いのがブレーキフルード。ブレーキフルードは油圧式ディスクブレーキに使用されており、多くのバイクに採用されています。仕組みはブレーキレバーを握ると油圧が発生しブレーキキャリパーのピストンを押し出し、ブレーキパッドがブレーキディスクを挟みこむことでブレーキが効くようになっています。
長い間交換しないと沸点が下がりブレーキが効かなくなる!?
ブレーキは潤滑油ではなく作動油なので、交換時期を過ぎてしまったからといって即故障につながるわけではありません。しかし、走る・曲がる・止まるの止まるのを担うのがブレーキ。止まらないバイクほど怖いものはありません・・・
ブレーキは使うと熱くなります。この時例えば水は100℃で沸騰しますが、ブレーキフルードは205℃(DOT3)まで沸騰しません。しかしこれはドライ沸点という水分を吸っていない状態での話。ブレーキフルードは吸湿性があり水を吸うと沸点が下がってします。
ブレーキフルードの吸湿率が3.7%になると『ウェット沸点』となり、205℃だった沸点は140℃まで下がってしまいます。このウェット沸点には1~2年すると達すると言われており、車検での2年毎の交換が推奨されているという訳ですね。


車検のあるバイクは車検時に交換。車検がないバイクは2年に1回、春の乗り出す時のタイミングで交換しましょう!
レバーなどの稼働部、ワイヤー類の注油


これは操作時の『フィーリング』や油ぎれによる『異音』に関係することです。やらなくても普通に乗れますし、気にならない方も多いでしょう。
でも快適に乗りたい、少しでも良い状態にしたいと思うのであれば、『注油』することをおすすめ致します。具体的にはフロントブレーキレバー、クラッチレバーなどのレバー類。リヤブレーキペダル、シフトペダルのペダル類。ブレーキ、クラッチ、アクセルに使われているワイヤー類。こういった可動部分に油を注す=注油するということです。
使うスプレーは?ワイヤー類は粘度の高いもの、揮発性が高いものは向かない
レバー類、ペダル類はグリース系のものが長持ちするのでいいでしょう。しかし、問題なのはワイヤー類、グリース系の粘度が高いものは、時間が経って固まってしまうと動きが悪くなります。
スプレーに『ワイヤー』と明記されているものが安心です。
ここ数年、私はベルハンマーのスプレーを使っています。潤滑特化タイプなので効果が高い点。拭き取っても効果が持続する点など値段は高いですが使う価値は十分にあると実感しています!
チェーン
チェーンの状態はいかがでしょうか?サビサビになっていたり、Oリングが切れていたり、張りがなくダルダルにたるんでいませんか?
チェーンはエンジンパワーをリヤタイヤに伝える大事な役割を持っています。その力を伝える部分が外に出ているわけですから正直言って危険な部分だと私は思います。メンテナンス不良でチェーンが外れたり、破断することは事故や重大な怪我につながる危険性があります。しっかり点検しましょう!
話を戻しますがチェーンがサビサビの場合とOリングが切れているのが見受けられる場合。これは即交換案件です。
目に見えてサビサビの場合は、ローラー部も渋くなっている可能性大!『キンク』と言ってコマが固着している症状が見られる場合は注油しても手遅れなので素直に交換しましょう!
Oリングはシールチェーンと言って内部のグリスが外に出ないようにOリングがいます。このOリングが切れているということはシールの役目ができていないので、同じく交換案件です。


このような症状がない場合はチェーンを清掃・注油して、チェーン張りを調整しましょう!
チェーンの張り調整方法は車種によって大きく異なるので割愛しますが、チェーン張り調整のポイントはバイクに跨った時にチェーンの張りに少し余裕があること。この時パツパツに張りきっていると、段差などでチェーンに大きな負荷がかかって破損する危険性があるので注意です!
タイヤの空気圧


意外と見落としがちなタイヤの空気圧。タイヤは路面と唯一触れている部分であり、タイヤが滑れば即転倒につながるバイクにとってタイヤは生命線そのもの。タイヤが新しくても空気圧が低くければ性能を発揮できません。
タイヤの空気圧は1ヶ月で5〜10%低下すると言われています。冬場乗らないとなると4~5ヶ月くらい経っているのでタイヤの空気は20〜40%も低下していますので、空気圧調整は必須となります。


空気圧調整はお金がかかるものではないので、ガソリン給油する際に一手間かけて点検・調整しましょう!
ただし、バイクの空気圧調整はエアバルブへのアクセスが悪いものがあり『アダプター』がないと、エアバルブにエアチャックが付けられない場合あるので、一つ持っておくことをおすすめします。
ライト類(灯火類)
趣味で乗るライダーだと夜間は乗らない人も多いと思います。しかし、灯火類は保安基準と安全に関わる部分なので軽視していけません。キップを切られたりや貰い事故に遭っては目も当てられませんよね。


ヘッドライトのハイ・ロー、テールランプ(ライセンスランプ)、ストップランプ、ウインカーなどバイクであれば自分でチェックできるのできちんと点灯しているか確認しましょう!
まとめ
今回は『乗る前にしたい整備』について
- 結論:バイクも寝起き。いきなりダッシュはキツイし危険。
- 寝起きも大事だけど、冬眠前も大事
- 眠らす前の準備
- 走り出す前の準備
- バッテリー
- エンジンオイル
- 冷却水
- ブレーキフルード
- レバー類、ワイヤー類の注油
- チェーン
- タイヤの空気圧
- ライト類
暖かくなると早く走り出したい気持ちになりますが、安全かつ快適に走り出すために一手間かけましょう!
それはバイクにとっても乗り手にとっても良いことだと私は思います!

