ネジ(ボルト・ナット)を外す時に固く、回らなくて困ったことはありませんか?
ネジの頭をなめてしまって工具がかからない、滑ってしまう、折れてしまったこんなことはありませんか?
自動車整備をしているとネジで困ること・ヤバそうな気配を感じることはたくさんあります。
手遅れになる前に、次章から紹介するステップを踏みながら、ネジと戦っていきましょう!
ネジを制するものは整備を制す!です。
ここでは、自動車整備士が実践するボルトの外し方の心得・コツ、外そうとしたけど緩まない場合、なめたり、ねじ切ってしまった場合などの対処方法をお伝えしたいと思います!
ネジにスプレー式潤滑剤をかける
最初はネジを外す前の準備。
いきなり工具で回そうとするのではなく、潤滑スプレーでネジ(ネジ山)の部分に油を浸透させることで、回しやすく・ネジ山を傷めづらいように準備をするのです。
例えば、乾いた路面と濡れた路面。どちらが滑りやすいかと言ったらもちろん濡れた路面ですよね!
ネジも金属同士が擦れるよりも、金属間に油があったほうが動きがスムーズになる。そんなイメージです。
ただし、場所によっては使えないケースもあるので、必要に応じて使いましょう!
私が実際に使っているおすすめのスプレー式潤滑剤はこちらの記事で紹介していますのでご覧くださいませ!
まずは浸透潤滑スプレーを吹きかけて緩みやすい環境を作ろう!
12角ではなく6角のソケット・レンチを使用する
次は工具の選定です!
12角の工具はメガネレンチなどで採用されており、工具を30度ずらすだけで工具を掛けなおすことができるので使い勝手が良いです。特に狭い場所などでは30度と60度この差が作業性に大きく響きます。
12角と6角でなめやすさは変わらないと工具メーカーはうたっていますが、私の経験上やっぱり6角のソケットのほうが傷んだボルトでもしっかり回すことができたということが実際に起きています!
(メガネレンチ(12角)だとナメてしまった→そのボルトに6角のソケットレンチを使ったら緩めることができたなど)
整備士の方はイメージできると思うのですが、インパクトレンチのソケットが6角を採用しているケース多いのはなぜでしょう?なめたネジに使うターボソケット・スクリューソケットも多くは6角形状しているのはなぜ?
結局そういうことだと思います・・・(あくま個人的な見解です)
固くてなめそうなネジには6角(6ポイント)のソケット・レンチ類を使おう!
ボルト、ナットに対し正しく工具をかける
次は実際に工具で緩める時の心得。
ここでいう『正しく』とは、『まっすぐ、奥まで』ということです。
急いでいたり、焦っていると、実はボルト・ナットに対してななめがけだったり、浅がかりだったりして、ねじの頭部分をなめたり傷めたりしてしまうことがあります。
プラスドライバーの場合は力加減を意識することです。
力加減は『押し7、回し3』です
回すことに意識がいってしまうと回し側の力が増え、ネジからドライバーがカムアウト(浮いてしまう)して、やっぱりネジ頭を傷めてしまいます。
メガネレンチ・ソケットレンチでは、ボルトに工具がかかる部分を片手でしっかり押さえつけることが大事!
ドライバーの力加減は『押し7、回し3』。レンチ類は工具がボルトにかかる部分をしっかり押さえよう!
力はじわじわではなく一気にかける
緩め方・力の入れ方になります。
怖いなー、なめそうだなーと思ってじわじわ力を加えるのは実は逆効果なんです!
固着しているボルトにじわじわ力を加えていくと、ネジが伸びてしまったり、折れてしまうことあります。
リーチの長い工具を用意し、ボルトにしっかりあてがって(押さえつけて)、『エイッ』といっきにに力を加えるのがコツ。
ネジの固着が急激に力が加わることによって剥がれて緩むという訳ですね!
ストレートメガネレンチや、スピンナーハンドルなどを強度があり長くて力の入る工具を使ってみましょう!
緩め方は『じわじわ』ではなく『いっきに』力をかけて緩めよう!
私の場合サスペンションやマフラー系のネジは野球のスイングばりにいっきに力をかけてますよ!
熱を加える、冷やす
特にマフラーなどの排気系のボルトに有効。
熱を加える:バーナーを使う
熱が入って固着してしまったり、サビついてしまったネジに対して、高温にすることで熱膨張差で取れやすくしたり、サビが剥がれたりすることで、ボルトが緩みやすくできるのです。
お手軽な方法は緩める前に走ってきて、マフラーなどを高温にしておくこと。
それでもダメな場合はトーチやバーナーでボルトを炙り、高温にします(やけど、熱害、火災に注意!)
私はキャンプ用のトーチを使用しています。CB缶(カセットボンベ)を使うのでガスの入手性が良いのでおすすめ。
火・ガスを使う場合は使用箇所と使用環境には十分気をつけて下さい!
冷やす:凍結スプレーを使う
また最近は『冷やす』ことで緩めやすくするスプレー製品もあります。
これは温めて『膨張』ではなく、冷やして『収縮』させることで隙間をつくってネジ山に潤滑剤が入りやすくしたり、サビを割ることでネジが緩めやすくすることができます!
いずれも場所によってはできない場合もあるので、この方法を使用する時は十分安全に配慮して行うようにしましょう!!
KUREの【凍結浸透ルブ】は代表的なスプレーなのでチェックしてみてはいかがでしょうか。
お助け工具を使う
もうネジの頭がダメになってきた場合の方法
ネジ頭が削れてドライバーや工具がかからなく、滑ってしまう場合、掴み系の工具や食い込ませる系の工具の出番となります。
ネジプライヤー
ネジザウルスに代表されるプライヤー形状のもので、より掴みやすく滑りづらい加工がほどこしてある工具。
普通のコンビプライヤーはギザギザが一方向で滑り易いものが多いのですが、ネジプライヤーは掴んだら滑らせないように工夫されているので、回せる確率が増えます!
普通にプライヤーとサイズが変わらないので細かい箇所におすすめ!
バイスプライヤー
バイスプライヤーはがっちりとくわえ、力不足で滑らないようにする工具。
人間何かを強く掴むことはできるのですが掴んだままでいるのは難しい。バイスプライヤーはロック機構があるので、加えた力を保持できます!
こちらもネジ緩めに特化したものを選ぶのがおすすめ。理由はこれも掴む部分の形状が考慮されているから。
また、オウム型と呼ばれる形状ものも滑りずらいので評判がいいですね!接触面が増えることで滑りづらくなってます。
ナットスクリュー、ターボソケット
ターボソケットやナットツイスターはサビや作業で角が丸くなってしまったボルトやナットに食い込ませて緩める特殊形状のソケット工具。ソケットレンチとして使えるので、使い勝手は良い!
コツはボルトにソケットを被せたら、ハンマーなどで叩いて喰い込ませせること。そして、ソケットをボルトに押し付けながら回すことです!
こういったものを使用して回ればラッキーです!
お助け工具は安物ではなく名の知れた工具メーカーのもの選びましょう!
安物は強度・精度が劣って使い物にならない場合がほとんど・・・
切断する、穴をあけて崩す
最終手段になります・・・
今まで書いてきたことを駆使してもダメなときはあります・・・
ネジの頭が完全になめてしまってお助け工具でも歯が立たない、ボルトが途中で折れてしまってナット側(メス側)に残ってしまった。こんな場合の対処方法になります。
ネジ頭をなめてしまったのであれば状況次第ですが、ネジ頭さえ取れれば物が外せる、交換できる場合、ネジ山側が残っても問題なく新品の部品が用意されている状態。
この場合はサンダー、グラインダーなどで、ネジの頭を切ったり、削り切ってしまえば取れるので有効な方法となります!
但し、再使用しなければならないもの、周りのものを切ったり削ったりしてはダメな場合は注意!!
やっかいなのはネジのナット側(メス側)に残ってしまった場合でで、その部分を再使用しなければならない場合
(エキゾーストマニホールドのシリンダーヘッド側とか最悪ですね・・・)
この場合、ボルトの中心に穴を開けて、【逆タップ・エキストラクター】を使用して抜き切る。またはネジ太さよりやや小さい穴開けて、ボルトを崩して取るという高度な技が必要になります・・・
折れたところにナットを溶接して取る場合もあります(どちらにせよ困難です)
ここの章はあくまで対処法の見本といいますか、DIYでは厳しい部分もありますのでこうならないように気を付けましょうということですね・・・
それでももしなってしまったら、ネジレスキューの業者さんに頼んで取ってもらうこともできます!
出張サービスなどもありますので料金はかかりますが、もっと最悪な状況になるんだったらその道プロに頼んだ方が早く・場合によっては安く済むこともありますので検討してみる価値ありです。(ディーラーでも外注する場合があります)
まとめ
【プロが実践する回らないネジへのコツと対処法 7選】
①ネジにスプレー式潤滑剤をかける
②12角ではなく6角のソケット・レンチを使用する
③ボルト、ナットに対し正しく工具をかける
④力はじわじわではなく一気にかける
⑤熱を加える、冷やす
⑥お助け工具を使う
⑦切断する、穴をあけて崩す
ネジの悩みはプロの現場でも頻繁に起こりなくなることのない永遠のテーマですが、少しの知識と心得で最悪の事態を回避できることが多いのもまた事実。
まずは舐めさせない緩め方を心がけましょう!
私の経験が皆様に少しでも役に立てば幸いです。
それでは良いクルマ・バイクライフを!!