タイヤ履き替えはお済みでしょうか?
4月になると関東では雪の心配もなくなりスタッドレスタイヤからサマータイヤの履き替えが加速する時期です。
このサイトは整備士やDIYer向けなので自分でタイヤ履き替え作業をしている方も多いと思います。
そこで大事なのが『ホイールナットの締め付けトルク』です!
外すときは緩めばいいのでので気にならないのですが問題なのは締める時、ただ闇雲に閉めればいいってわけでもなく、適正なトルク管理が必要です。なぜなら、強すぎても弱すぎてもトラブルに繋がるからです。
ここでは【日産車】のホイールナット締め付けについて、深掘りしますので見ていただければ迷わず、トラブルを未然に防ぐこともできますので是非見ていただければと思います!
結論から言えば108N·mか85N·mです!理由は本文にて解説していきます。仕事で使うなら便利な『ホイールナット専用トルクレンチ』も紹介しますので参考にどうぞ!

国産自動車ディーラーで整備士経験15年以上の経験と見解でお送り致します!
ホイールナット締め付けトルクの重要性
安全のためにおさらいです。ボルトやナットというものはただ締めれば良いというものではありません。ボルト・ナットのサイズや材質、ネジで固定する対象物によって変わります。
今回、フォーカスしているのはホイールナット。ホイールナットはホイールを固定しているものであり、タイヤを固定しているとも言えます。このホイールナットの締め付けが適正でないどうなるか?
締め過ぎの場合
締め過ぎの場合、まずホイールナットやハブボルトの寿命を縮めます。ホイールナットは他の部分と比べて、取り外すことが前提となる部分です。適正の締め付けで使用しているならば、車の一生で交換するしなくて済む場合がほとんど。
しかし、締めすぎることでネジ山が傷んでホイールナットがスムーズに回らなくなり、ネジ山がカジって破損に至ることも。この場合ホイールナットとハブボルトの交換が必要になります。


交換するしかありません・・・


下:新品のハブボルト
もちろん、締め過ぎすることでホイール自体も傷んでしまうことも・・・
トルクが不足している場合
トルクが不足。つまり締めが緩い場合、走行よる影響で緩みが進み最悪ケースでは脱輪してしまう場合があります。
締め過ぎが怖いからといって締めが甘いと、タイヤが飛んでってしまう!これは自分だけでなく他人も危険に晒すことになります!
脱輪に至らない場合でも、緩んだ状態で走ることで、ホイールナット、ハブボルトをダメにしてしまったり。最悪ホイールの穴が拡がってしまってダメになってしまったケースを仕事で遭遇しています。
安く済ませようとしてやったことが、結局高くついてしまったとならないため、ホイールナットのトルク管理はしっかりやりましょう!トルクレンチも安価で手に入る時代です。
ホイールナットの締め付けは弱くても強すぎてもトラブルの元になります!
日産車のホイールナットの締め付けトルクは1つじゃない
今回の大事なところ。一つのメーカーでも車種によってホイールナットの締め付けトルクは変わる場合があります。
それはOEM車と言われる製造元が他メーカーの場合がほとんど。元の設計から違うのですから設定されたトルクも違うというわけですね。
車両の製造元によってトルクが異なる
ここでのホイールナット締め付けトルクは日産自動車ホームページで閲覧できる車両取扱説明書調べです。
もちろん、全てを確認したわけではないので、記載ミス等あればコメントをいただければ助かります。
対象は軽自動車、乗用車で年式は2010年以降とします(Web車両取扱説明書で確認できる範囲)
純日産車
ここでの『純日産車』とは設計から製造まで一貫して日産ブランドの車。(エンジンだけ別の例外有り)
ノート、セレナ、エクストレイル、エルグランド、スカイライン、フーガなどが当てはまります。
この場合ホイールナットの締め付けトルクは108N·mに統一されています。(一部例外有り)
ホイールナットのサイズはM12、ピッチは1.25mmとなっています。二面幅は21mm。
ナットの座面について多くは一般的なテーパー型ですが、スカイラインなどの一部で平座面型があるので、スタッドレスタイヤ購入時は注意!
この調べが先ほど2010年〜と記載しましたが、純日産車であればそれ以前でも大体108N·mでいけますのでご安心を!
(例外としてR35 GT-Rは132N·m、R35 NISMOは155N·mとなっています)
三菱系
三菱系とは三菱車OEMまたは共同開発車。
サクラ、デイズ、デイズルークス、ルークス(BA1)、オッティ、キックス(軽自動車)、クリッパー(MA0)。
ホイールナットの締め付けトルクは88〜108N·mとなっています。サクラ、現行のデイズ(AA1)とルークスから中央値の98N·mの記載(ボルト・ナットは旧型デイズ(AA0)と同じ)
ホイールナットのサイズはM12、ピッチが1.5mm。二面幅は21mmとなっています。
袋タイプのホイールナット場合、球の部分が日産よりも大きいのが特徴です。


右:純日産車ホイールナット
ネジピッチが純日産車と違うのでホイールナットの混用はできません。スタッドレスタイヤを使い回す時は古いナットは使えないケースもあるので確認を!
スズキ系
スズキ系とはスズキ車OEM。
モコ、ルークス(VA0)、NV100クリッパー(ZA0、ZA1)です。
ホイールナットの締め付けトルクは85N·m。低く設定されています。
ホイールナットサイズはM12、ピッチは1.25mm。二面幅は19mm。
ハブボルトの強度が弱い印象があり、普通車のように扱うとトルク過多でネジ山が損傷しますので要注意!
他メーカーのハブボルトを見比べると、材質なのか焼き入れなのか詳細は分かりませんが、個人的にはユニクロメッキのような安価な印象を受けます。
ホイールナットが19mmと小さいので純正のナットであれば見分けがつきます!
マツダ系
マツダOEMは2車種。ラフェスタハイウェイスター(B35)、バネット(S21)になります。
(バネットは貨物車ですが数少ないマツダOEMなので特別枠とします)
ラフェスタハイウェイスターが88〜118N·m。バネットが89~117N·m。とほぼ同じ。
(バネットでダブルタイヤの場合は147〜167N·m)
ホイールナットサイズはM12、ピッチは1.5mm。二面幅は21mm。
ホイールナットの規格は三菱系と同じですね!
ざっくり見れば108N·mか85N·mの2択
振り返って見ると見えてくるのですが、純日産車の108N·m、スズキ車の85N·mの2つのトルクで対応できます!
締め付けトルクの範囲があるのがミソで、三菱系の88〜108N·m。マツダ系の89~117N·m(範囲が狭い方)
どちらも108N·mが範囲内なのでOKと解釈できます。
そしてスズキ車は範囲がなく85N·m指定。(強度も不安ありなので108N·mはさすがに締め過ぎ)
三菱系が以前からの範囲表示から中央値表示に変わったので気になる方・心配な方はきっちり98N·mでトルク管理するのがいいでしょう!
仕事で使うならホイールナット専用トルクレンチが使いやすい
自動車整備士の仕事ではホイールナットの締め付けを行わない日はないと言っていいほど、日常的で大事な仕事になります。つまりトルクレンチを使わない日はないとも言い換えられます。


特徴① 固定トルクで設定不要!
先述したように日産車の多くは108N·mです。プリセット型トルクレンチを使うのでも良いのですが、毎回設定するのは面倒で大変。しかし、設定したままはトルク精度への影響が心配・・・
ホイールナット専用トルクレンチはあらかじめ決められたトルク設定で固定。なので設定不要なのはもちろん元に戻す必要もありません。
KTC製のホイールナット専用トルクレンチは3種類あり、85N·m、103N·mそして108N·mがあります。
85N·mはスズキ系、108N·mが純日産車という訳です。
(103N·mはトヨタ・ダイハツ車に適した設定トルクとなっています。)
簡単に見分けられるように、首折れ部のカバーが色分けされています!色別の設定トルクは赤が108N·m、黒が103N·m、青が85N·mとなっていて人目で判断できます!
特徴② 長さもホイールナットを締めるのに最適化!
全長は420mmでタイヤとレンチが干渉しない長さになっています。108N·mを締めるのに必要は力は長さによって変わり、短いと力が必要で大変、長すぎると軽い力で済みますがネジの傷みに気付かない可能性も。
適正な長さは疲労軽減にもなりますので使う頻度が多い人ほどお勧め!


結論:メインに扱うトルクのホイールナット専用トルクレンチを用意しよう!
日産車をメインに扱うなら108N·mのホイールナット専用トルクレンチを持っておきましょう!
余裕があればサブとして85N·mも専用を持っておくと便利。しかし、頻度が少ないのであれば汎用トルクレンチでもいいと思います。
トヨタ・ダイハツ車メインなら103N·m固定を、スズキ車メインなら85N·m固定を用意しましょう!
気になるのは価格ですよね?
定価は25300円と結構高いのですが、Amazonでの実売価格は約16000円!1万円程度安く買えるので検討してみてはいかかがでしょうか?




ナットにあったソケットをトルクレンチ専用としてつけっぱなしにしておくと、使い勝手が良いのでお勧めです!


まとめ
【日産車】ホイールナットの締め付け
- ホイールナット締め付けトルクの重要性
- 締め過ぎの場合
- トルクが不足している場合
- 日産車のホイールナットの締め付けトルクは一つじゃない
- 車両の製造元によってトルクが異なる
- 純日産車
- 三菱系
- スズキ系
- マツダ系
- ざっくり見れば108N·mか85N·mの2択
- 仕事で使うならホイールナット専用トルクレンチが使いやすい
- 特徴① 固定トルクで設定不要!
- 特徴② 長さもホイールナットを締めるのに最適化!
- 仕事で使うならホイールナット専用トルクレンチが使いやすい
- 結論:メインに扱うトルクのホイールナット専用トルクレンチを用意しよう
繰り返しなりますが、ホイールナットの締め付けは安全に関わる重要な要素ですので、しっかり管理しましょう!
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです!