フロントフォークからオイル漏れしているんだけど、どうしたらいいの?
バイク乗り共通の悩みです。
今回はNS−1のリフレッシュ企画でフロントフォークのオーバーホールをするので、正立フロントフォークの方は作業の参考にして頂ければと思います。
もちろん車種によって使う工具と作業方法は異なる部分もありますが、共通する部分もありますので是非見て下さいませ!
この記事は国産自動車ディーラーにて15年以上の整備士経験と見解でお送りします。
バイク整備は自己流。
結論:フロントフォークOHは工具が必要、揃えてから挑もう!
フロントフォークオーバーホールには専用工具が必要です。一個一個は高いものではないですが意外と数が必要。ケチって揃えないと結局買いに行くことになる(作業が止まる)ので調べて揃えておきましょう!
- ロングヘックスソケット
- ダンパーロッドロックツール
- 長いエクステンションバー
- T型オイルシールプーラー
- フロントオイルシールプッシャー
- メスシリンダー
- シリンジ(針なし注射器)
全てが必須ではないですがないと困るものばかりなので1台と長く付き合っていく方、何台かレストアする予定の人は揃えることをおすすめします。
フロントフォークを外す

まずはフロントフォークを単体にしましょう!
車種で作業は異なるのでざっくり説明。
・フロントスタンドにかける
・ブレーキキャリパーをどかす
・フロントホイールを外す
・フロントフェンダーを外す
・必要に応じてハンドルを外す
・三又からフロントフォークを外す
といったところです。
写真のように『フロントスタンド』があると安全かつ作業が捗るのでおすすめです。
私が使っているのはストレート製(リヤスタンドも同様)
ポイント:トップキャップを緩めておく
フロントフォークの『上のフタ』であるネジ式のキャップは単体にしてから緩めるのは大変です。なぜならインナーチューブは円柱型で工具で挟めないですし、摺動する部分はキズつけてはならないからです。

ではどうするか?三又から抜くときに少し下げた段階で、インナーチューブを再固定し緩めておくのです。こうすることによって後で困って、元に戻す手間が省けます。

トップキャップは完全に緩めるのではなく、トルクを抜く程度に緩めればOKです!

フロントフォークの分解
フロントフォークが単体になったら、いよいよ分解です。
キャップボルトを外しオイルを抜く
先ほど緩めたキャップボルトを外してフォークオイルを抜きます。このとき、キャップボルトは中のスプリングを押さえ付けているのでフォークを地面に立てて押し付けて回すとキャップが飛び出して危険!なので、横向きにしてゆっくり外すのが安全作業のコツです。怪我をしないように気をつけましょう!
キャップを外すと、フォークスプリングが取り出せます。中の部品は順番に並べておきましょう!夢中で外していると、順番がわからなくなってしまいます。
最難関!ボトムケースのロックボルト外し
この段階ではインナーチューブとボトムケースは繋がっておりこれ以上分解することができません。ボトムケースの底に六角穴付きボルト(ロックボルト)で固定されているからです!このロックボルトを外すには2つの問題があります。

①ボルトが深い位置にあるので通常の六角ソケットレンチでは届かない。L型のレンチではリーチが短い方が手元になるので力が入らないので困難。
②緩める時に、内部で『供回り』してしまい。ロックボルト緩めることができない。
①はロングタイプのヘキサゴンソケットが有ればOK。②はインパクトレンチで緩められたらラッキーという話がありますが所持していなかったり、閉める時の供回り問題と適正トルクの問題があるので、インパクトレンチの使用はおすすめできません。インパクトレンチを使用しても供回りする時はするのでやはり難しいのです。
ではそうすればいいのか?『回り止めツール』を使用するのです。いわゆるSST(スペシャルサービスツール=専用工具)になるので、この作業でしか使うことはないのですが、この工具がないことで多大な時間を無駄にするので有れば潔く買ってしまった方が結果安いと思います。値段も高いものではないので、自分で色々やりたい人は買ってしまいましょう!

9.5sqのソケットレンチ工具で先端が細長い『くさび』のような形状をしています。このくさび部分が内部で食いつき回り止めになって、六角穴付きボルトを緩めることができるのです!

ロックボルトがケースの中で固定している部分

なので『くさび形状』の工具で回り止めする必要がある
しかし、この工具だけではまだ足りません。『長さ』が足らないのです。回り止めはインナーチューブの奥底にあるので長さが必要。ロングエクステンションバーを使用して伸ばすことが必要です。NS-1の場合は250mm+150mmで合計400mmほど長さが必要でした!


延長の後ろにはスピンナーハンドルをつけて、回す力に耐えられるようにします。そして工具を押し付けながら、ヘックスソケット側を回せば緩めることが出来るはずです!

下のモンキーはケース自体の回り止めです
六角穴付きボルトを外すと銅ワッシャがあります。このワッシャはオイル漏れ防止の為にあるので、必ず交換になります。
ロックボルトを外すと、インナーチューブを取り出すことができます。


ダストシール、オイルシールを外す
ダストシールはマイナスドライバーなどの先端でこじって浮かせることで取ることができます。こじる時に周りを傷つけないように使う工具は先端が薄くなっているものがベター。ダストシールは難しくないのでキズ付けないよにだけ注意すれば比較的簡単に取り外すことができます。

より気を遣うのが『オイルシール』の交換。オイルシールは中に入っているオイルの漏れを防止している重要な部品なので、交換作業時に傷つけてしまうと、オイル漏れして作業やり直しとなってしまいます。
注意するべきポイントは3つ
①こじる時に筒の壁にキズを付けない
②挿入時にオイルシール内側にキズをつけない
③打ち込む時に元の位置まで水平に打ち込む
①こじる時に筒の壁にキズを付けない
①は無闇にマイナスドライバーなどで外すと失敗しやすいのでオイルシールプーラーがあると上手に外せます。

筒の中に圧入してあるオイルシールをオイルシールプーラーでコジって外します。
通常のオイルシールプーラだと、フォークのオイルシールが位置が深く、径も小さいので支点がつくりにくく作業が大変。しかし、T型だと『支点』が作りやすいので比較的簡単に外すことができますよ!

T型は『支点』が作りやすい!


②挿入時にオイルシール内側にキズをつけない
②はオイルシールを組み付ける時はインナーチューブのサビに注意!
インナーチューブのサビはチューブ表面より出っ張っていることが問題でシール内側を傷つけてしまいます!こんな時はインナーチューブにカッターの歯を寝かせて滑らせることでサビの凸部分を取り除くことが出来ます。

③打ち込む時に元の位置まで水平に打ち込む
③はオイルシールが斜めに入ってしまうとシール不良となりオイル漏れしてしまいます。なので水平なるよう均等に打ち込むことが必要です。
オイルシールは『フロントフォークオイルシールプッシャー』を使うことで、均一に打ち込むことがるできます。

奥まったオイルシールを均一に打ち込むことができます!
またオイルシールを外す前に、どこまで入っていたかを覚えておくことも大事です!


オイルシールが済んだらダストシールを打ち込みましょう!ダストシールはオイルシールより簡単ですが油断はしないように。
『シール』類はキズが付いてしまうと役割を果たせないので、傷めないように気をつけましょう!
シール類は取り付け前に『シリコングリス』を塗っておきましょう!キズ防止・滑りが良くなるので組み付けしやすくなります!
シリコングリスはゴムを傷めないのでシール類にも安心して使うことができますよ!

フロントフォークの組み付け作業
あとは逆の手順で組んでいけばOKです。分解した手順と逆に組んでいきます。部品はパーツクリーナーで綺麗に洗浄しておくこと、順番を間違わないように置く順番にも配慮することが失敗しないコツです。
ロックボルトにはオイル漏れ防止の銅ワッシャがありますので、必ず新品に交換しましょう!
フォークオイル注入
フォークスプリングを入れる前に、インナーチューブ内にフォークオイルを注入します。
フォークオイルは規定量を左右均等に入れ、油面調整をして左右を揃えます。なので慎重に作業必要があります。
左右に極端なズレがあると減衰力に差が出てスムーズな動作に支障が出てしまいます。
とは言っても、レース車両ではなくて自分で楽しむDIYであればこれからの作業を参考にして貰えば、極端に左右差は出ませんので参考にしていただければと思います。
①規定量を測って入れる
左右の油面高さを揃えるには、まず同じ量を入れること。ジョッキのメモリを参考にして入れるのと、メスシリンダーで測って入れるのでは正確さに差が出るのはわかると思います。
エンジンオイルの量にはHとLレベルがありこの範囲のオイル量があればOKとなりますが、フォークオイルはそういう訳にはいきません。減衰力に差が出てしまうのでもっと量に関してシビアなのです。
なので『メスシリンダー』で測って正確な量を入れましょう!メスシリンダーといっても学校で使うガラス製のものではなくて、整備用に適した樹脂製のメスシリンダーが販売されていますので、入手しておきましょう!


②油面高さを揃える
規定量を入れば大きな差は出ませんが、部品の個体差によって容積が同じとは限りません。
フロントフォークはオイル上の空間にある空気をスプリングとして使います。例えばシリンジ(針なし注射器)の先を塞いだまま縮めようとしても空気を圧縮するので完全には押し切れませんよね?これも空気がスプリングの効果をしているからです。
フロントフォークはフタをするので中は密閉されます。なので内部の空気はスプリングになるのでオイル上の空間を左右で揃える必要がある。つまりオイルの高さを揃える=油面調整が必要となる訳ですね!
シリンジで吸い取って油面を合わせる
ではどうやって油面高さを揃えるか。それはシリンジで余分なオイルを吸い取って合わせること。具体的にはインナーチューブの一番上から規定の高さ(長さ)を測ってシリンジで吸い取ります。
フォークオイルレベルゲージという器具を使います。
フォークオイルレベルゲージとは正確なフォークの油面調整に欠かせないシリンジ(注射器)とレベルゲージが一つになった便利な商品。

メモリ付きのアルミチューブを目標油面高さにセットし、シリンジで余分なオイルを吸引。
これを左右で行うことうことで左右差がなくすことができるという訳ですね!
フォークオイルレベルゲージはここでしか出番がありませんが、シリンジ部分は他にも用途があるのでDIY派の方は持っておいてもいいと思います。

フォークスプリングを入れキャップを締め付ける
油面調整したインナーチューブの中にフォークスプリングを入れます。この時オイルをこぼさないように静かにゆっくり沈めていきます。
その後キャップを閉めるのですが、フォークスプリングを少し縮める必要があるので作業中にオイルをこぼさないように気をつけましょう!
キャップの本締めは三又部分を利用する
キャップを緩める時と同様に締める時も三又のインナーチューブ固定部分を利用するのが楽で確実です。
これでフロントフォーク単体の完成です!

逆の手順で車体に組み付ける
フロントフォークが完成したら車体に戻します。
手順は逆の手順で戻せばOKです!
注意点は組み付け時は分解と違いボルト・ナットの締め付けトルクが重要なので、一つ一つ確実に締めていくことです。
締めたボルトにマーカーペンでマーキングしていくことで締め忘れを防止できますので、心配な方は印をつけることをおすすめします(自動車整備では多用しますが、バイクは剥き出し部分が多くで目立つので場所によって)
フロントフォークオーバーフォール完了!
以上でフロントフォークオーバーホール完了です!多くの場合オーバーホールの目的はオイル漏れ修理の場合が多いですが、漏れ修理以上の効果があります!それはサンペンションが『仕事』をするようになることで、乗り心地やコーナリングにも体感出来る変化があるからです!
本来ならフォークオイルは1〜2万キロで交換が推奨されますが、実際このサイクルで交換している個体は少ないのが現状だと思います。3〜4万キロ走っていたり、10年経ってオイル漏れしたからオーバーホールするということがほとんどです。なので尚更体感できるという訳ですね!

(この姿になるにはまだ先ですが・・・)
まとめ
HONDA NS-1 リフレッシュ計画 その6 フロントフォークOH編
- 結論:フロントフォークOHには工具が必要、揃えてから挑もう!
- フロントフォークを外す
- ポイント:トップキャップを緩めておく
- フロントフォークの分解
- キャップボルトを外しオイルを抜く
- 最難関!ボトムケースのロックボルト外し
- ダストシール、オイルシールを外す
- フロントフォークの組み付け作業
- フォークオイルの注入
- ①規定量を測って入れる
- ②油面高さを揃える
- シリンジで吸って油面を合わせる
- フォークスプリングを入れてキャップを締め付ける
- キャップの本締めは三又部分を利用する
- 逆の手順で車体に組み付ける
- フロントフォークオーバーホール完了
工具も知識も必要ですが、やれば確実に良くなるのがフロントフォークのオーバーホールです!
フロントフォークに漏れがあったり、長く乗っているけど一度もオーバーオールしたことないよって方は検討してみてはいかがでしょうか?(自信のない方は素直にお店に依頼しましょう!)
今回使用した特殊工具は他の車両にも使えるものばかりです。バイクを複数台持っている人なら『元が取れる』かもですよ!(参考:正立式フロントフォークのオーバーホール工賃は20000円〜が多いようです)
今回の車両はNS-1ですが正立フォーク式なら似たような作業になるので参考になれば幸いです!